見えない幸運

非常な幸運の裏には神様の力が働いていることが多い。この一例が関門海峡トンネル・水没事故で列車が助かった件である。
1953年(紀元8年)の梅雨は大雨続きであった。6月28日日曜日も雨が降り続いており、関門トンネルに備え付けられた排水ポンプは稼働を続けて、トンネルに侵入する雨水を排出し続けていた。11時頃、戸ノ上山の山麓でがけ崩れが発生し、門司駅北側の大川を堰止めた。これによって溢れた水が門司駅構内に流れ込み、門司駅から関門トンネル坑口へと流れ込み始めた。11時頃に巡回中の門司保線区員がこれを発見して通報した。上り線は門司駅からの発車を見合わせた。
続いて、下関側に連絡して下り列車の抑止を行おうとしたが、約800名の乗客を乗せた岩国発佐世保行下り第327列車は10時57分に既に発車した後であった。関門トンネルを抜けてきた第327列車の機関士は、門司方の出口で防水壁の切り欠きからの落水に気づき、また公安職員の停止の指示を受けて、11時8分頃、トンネル出口の約70メートル手前で列車を停車させた。保線区員が土嚢を積んで切り欠きを塞ごうと試みたが、思うように塞ぐことができず落水は止まらなかった。仮に落水の中をそのまま通り抜けた場合、車両故障が発生し、トンネル内からの脱出が不可能になる恐れがあった。電話で指令室の指示を仰いだところ、トンネル自体の浸水を懸念したことから強行突破の指示が出され、11時17分頃に脱出を開始した。列車が停止した場所から落水場所までは数十メートル程度しかなく、また急な上り勾配の途中で列車の引き出しは容易ではなかったこともあり、機関士はいったんトンネル内に列車を退行させた。EF10形電気機関車は車両の前後に合計2台のパンタグラフを搭載しており、このうち前部のパンタグラフを下げて、後部のパンタグラフのみから集電した状態で列車を再発進させると、勢いを付けてトンネルから出てきて、落水箇所の直前で後部のパンタグラフも下げて落水箇所を惰性で通過し、通過直後に前部のパンタグラフを上げて門司駅へ向かい、11時24分頃に無事に到着した。
この直後の11時30分頃、防水壁の上を越えて水が滝のようにトンネル内に流れ込み、排水ポンプが水没、故障し、あっという間にトンネルは水没した。
神教で伝わる記事は次のようである。(天声11号P33)
この列車に九州の同志Aが一人乗っており、トンネル内で緊急停止した時、名妙法連結経のお祈りをした。この時道場で大神様がお祈りを初められ、皆にも祈れと指示された。同志が乗っていたから、あの列車を救ったと言われた。Aさんは当時下関で働いており八幡の両親に用事ができて、この列車に乗った。関門トンネルに入りまもなく列車は急停止。真っ暗なトンネル内で赤ん坊が火の付いたように泣き出し、何とも言いようのない不吉な予感がした。お祈りだ、と名妙法連結経を祈り始めた。車掌の話では、「危険信号により急停車した。門司駅前は大人の首まで増水しており、門司から先は不通。門司側のトンネル出口に今猛烈な勢いで泥水が流れてきた。今でると危険なので小降りになるまで待つ。」とのことでいよいよ不安になった。すると突然汽笛が鳴り列車が動き始めた。そしてトンネル内に水がどんどん流れ込み、60cmも浸水している中を水しぶきを上げながら突進し、やっと門司駅に到着した。機関士の機転で助かった。大神様が機関士の頭をひねられたお陰であるとAさんは思った。いずれにせよ、大神様が助けてやるといわれたら助かるのである。