本部道場余録 天声第67号(紀元14年7月号)

 6月のある日のことであります。ふと御説法にお出ましの大神様のみ顔を拝すと、下顎がまるで無くなられた様に見えますので、驚いて、目を見張って気付かせて頂くと、下の入歯をお入れにならないで御説法に出ておられたのでした。お聞きすれば『あまり歯茎が痛いので、歯を入れずに出たが、唾が飛んでやはり喋りにくい。重い入歯を外しておると、とても気持ちが良いが、説法に出る時、又入れなゃならんと思うと涙が出るような思いがすることがある』とぽつりとおもらしになるのでした。その神言は私の胸に5寸釘を打たれた如くいつまでも、うずきを感じさしております。

 365日、この十有余年間、人の何百倍、何千倍、何万倍か、お口を使ってお話しになることにより、早くから総入歯の下顎の歯茎が次第にすり減って、現在では、2センチ余りにも見える台を入歯につけられて、益々重くなっている入れ歯なるが故にまたそれだけ、残り少なくなられている歯茎に応えるのでございましょう。

 最近は又上顎の歯茎もお痛みになるのを、血を絞り出しては、無理に御説法を続けられている状態であります。唯唯大神様に『もう御説法はおやめくださいませ、私達が立派に一人立して、共々にやらして頂きます』とお願い出来るまで、行じていない自分自身が腑甲斐なく、申訳なく思わして頂くのみであります。今年も早や半年経ってしまいました。光陰矢の如しとやら、また悔いを千歳に残さぬよう、行じさせて頂きましょう。

 大神様には、農繁期の最中、6月18日の夜行で大阪にご出張、読売テレビの要請で『蟻の町のマリア』で一躍有名になった作家、松居桃楼氏とのご対談を19日に済まされ、夜は夜で大阪繊維会館で溢れる同志に御説法の後、その日の夜行列車に乗られ御帰場になったのでした。あくまで先頭に立たれ身をもって御垂範される大神様にただただ頭の下がる思いであります。(中山) 

支 部 だ よ り ニューヨーク

 昨年夏、小出天声編集係を失ったニューヨーク支部は、にわかに吹き込んだ風にランプの灯火を取られた時のように、すっかり鳴りを潜めてしまいました。遅れ馳せながらその時の様子や、その後の支部についてご報告させて頂きます。

 思えば昨年5月18日午後1時半に行われた小出氏の告別式は誠に印象的な催しでありました。まずそれはニューヨーク支部での最初の同志告別式でもあり、おそらく火葬場の役員達にも初めてで、大変珍しかったと見えて、彼らは隠れるようにして、しかも珍しそうに熱心に私達の葬儀を眺めておりました。まず場内では、小出氏のお棺の前で、岡島支部長は厳粛に挨拶をして小出夫人を紹介なされました。すると小出夫人は、美しいお声で無我の歌を高らかに歌われ、とても和気あいあいとした感じでありました。そしてお棺は、名妙法連結経で奥に運ばれて最後のお別れとなりました。

 次いでその日は、ご慰安日でありましたので、係の人に交渉して、野外で約30分程、無我の舞をいたしました。かくして、ニューヨーク支部は火葬場で真の宗教であることを、心ゆくまで広告したのでした。

 私達の支部では毎週火曜日に、磨き会をいたしております。お祈りの後、一人づつ反省懺悔や神教のお話などをして、その後大神様の御説法をテープで聞かして頂いております。木曜日にも集まって、座談会を催しております。夏には日を選んで、プロンクスの植物園に集まり、皆で無我の舞をいたします。私達が舞っておりますと、自然に目を引かれて、集まり来る群衆は、物珍しげにものを問い始めます。神教のパンフレットを差し上げますと、色々な質問をなさいますので、出来るだけの説明を英語で試みます。アメリカ人に神教を伝えるには、まず英語という大きな外堀があるので大変難しいことであります。長年住み慣れた私達としても大変だと思うように、言語が十分に通じない事を遺憾に思いますがいかしかたありません。

 思い返せば5年前、大神様は、当ニューヨークで御巡教下されました折は、ブルクリンパークの植物園で、或いは、イーストリバーサイドで、又はコロンビア大学内で、ニューヨークの人種の違う人々に真人間の道ー「利己利己利己で崩れた世の人達を救うには利己を捨てなきゃ救われぬ」とご指導くだされ、支部内では、迷える私達を救わんがため、お体に無理をされても、少しのお休みもなく、毎日毎日御説法下さったあの尊い神姿を今、まざまざと思い起こしては支部同志一同、やらして頂けねばの覚悟を新たにしております。本部より遠く離れている私達は、何のご奉仕も出来ませず心苦しく思っています。せめて新道場建設の資金面で真心を尽くさせて頂こうと、支部同志一同張り切っております。

 来る7月のご本部での支部長会議出席のため当支部長、和木林之進氏が近々出発の予定であります。今から同氏が大きなお土産を持って帰って下さることを、一同楽しみにしております。微力ながら地球の反対側におります私達一同のささやかな真心を、大神様始め、内地同志の皆様にお届け申し上げます。(片山宝一) 

(注)小出未亡人は大神様の指示でニューヨークの高齢の同志と再婚した。その家庭がゴタゴタした時、大神様は、お手紙に「ゲンコツ」を付けて送られた。手紙がついた時、洗濯機の所にいた夫人は後ろから何者かに殴られ、正気が戻った。ご説法でよく話される。