虚構の世界

芥川龍之介の小説に「藪の中」というのがある。事件が起き、当事者の思い込みが、まちまちで真相不明というような筋だった。これは小説だけの世界ではないと思う。極言すれば、すべてがこうだとも言える。各人が、各様の自分だけの「虚構の世界」を創りあげ、そこに自分を中心に他人を配置して、妄想を膨らまして創りだした自分勝手が効く便利な架空世界で生きているとも言える。「その人その人の心で、その人その人の世界に住むということを知らにゃだめよ」と大神様は言われた。根本的な反省をするためには、自分が今まで積み上げてきた、知識・価値観・常識、これらすべてが、基礎から歪んでいる可能性を考える必要がある。歪みは、基準があって初めて測定可能になる。他の歪んだものを基準にして、自分の歪みはわからない。真っすぐの基準は神様しかわからない。自我をなくすと、虚構の世界でなく、神中心に人々が和して暮らす明るい世界が現れ、そこに自分がいる。各人は同じものを見る。こうなると想像される。神の国であろう。
(注)虚構の世界の例
①自分の努力で埋められない大損を、他人への連帯保証という軽率な一瞬の失敗で負ってしまった人。競馬・競輪・投機などで取り返そうとして、ますます貧の深みに沈む。
②一流企業で高学歴・高収入なサラリーマンで普通に暮らせば十分に生活できるはず。しかし競馬で大儲けした嬉しさが忘れられず、競馬にのめり込み、貧の極みの生活を続ける。競馬さえやめれば抜けられるのは本人も十分分かっていても、やめられない。大儲けの架空世界に操られている。
③得をしたい、得をしたいが本性の為、バーゲンあさりがやめられない主婦もいる。不要品でも貯めこむ。
④酒を見ると見境がない。その味と陶酔の誘惑に勝てない。深酒し、愚行をし、破産したりする。
⑤女と見ると見境がない猟色家。愚行により健康・家庭・地位などを失う。
⑥異常に独占欲が強く、配偶者を囲いたがる人。嫉妬心が強く、被害妄想があると配偶者を心理的に縛り苦しめる。前世の因縁による。
⑦人に称賛されたい為だけに、無理な見栄・嘘を積み重ね、子供の学歴を作ろうとあがき子供をダメにする親。
⑧サラリーマン退職後、誰が見ても失敗確実な商売、事業に夢中になって猛進する人。
などなど。自分の業が、架空の世界を自分に映し出し、自分を弄び、苦しめる。自縄自縛とは言い得て妙だ。他人から冷静に見れば、ドン・キホーテのように、想像と願望に操られて愚行を演じ続ける。その愚行の結果が酷い業になり集積、苦悩する人生になっていく。
大神様は岩戸神話の本当の意味として、「人の心が真っ暗がりなのは心に岩戸を閉ざして、神の光が届かなくしているからである。大神様に会うと、岩戸が開き、神の光が心に差してくる。すると心に住む鬼が出ていく。すると明るくなって、神に使われるようになる」「心の鬼が人間を地獄に落とす。自分がやりたい、やりたいと焦って、誰が見ても失敗確実な商売に突進するのは一例。」
神教を行じていくと、たとえ事業に失敗しても、自我で始めた事業はやはり駄目だった。因縁により亡くさねばならなかった財産を早くなくしてよかった。と感謝がでるようになる。すると鬼は出ていく。
「神様はこうしてくれるだろう」という人間の想像と願望から宗教も虚構の世界に改変されていく。参照:
2009−06−04宗教の発展なのか退行なのか
https://umou.hatenablog.com/entries/2009/06/04
2009−06−05誤謬化された真理ーー悪人正機
https://umou.hatenablog.com/entries/2009/06/05