偽りの生活をやめよ 加藤泰山

Aさんの同僚は妻と幼い子どもを持ったサラリーマンであったが、小遣いに常に不足を感じていた。そこで自分の小遣いを増やす工夫をしていた。会社の給与振込の制度で、振込口座を2つに分けられるのを利用して、妻には第一口座のみ教え、第2口座の分を自分のヘソクリにしてた。これと同様なことを昔にやっていた同志Bさんがいた。当時は給与袋に現金と手書きの明細書が同封されて支給されていた。Bさんは明細書を偽造して、自分のヘソクリ分を差し引き妻に渡していた。ある日大神様はBさんに「偽りの生活をやめよ」と注意された。Bさんは直ちに、この給与明細操作をやめた。この種の偽りの生活を詳しく掘り下げて書いた本がある。
大神様在世中に入教した同志の中には他宗を経験してきた人も多数いた。彼らの中には自身が霊能者であったり、霊能者に出合った経験を持つ人も多数いて、その経験を天声に投稿している。「某霊能者は大学教授が学生数名を連れて霊能を調べに来た時、テーブルの上の急須を霊能で遠隔操作し、浮かせて各人の湯呑みに注いて回らせた」「某霊能者は樹上のコウモリを呪文で焼き殺した」など多数ある。その中で大神様が本物と言われた人が加藤泰山である。「あれは13番目の弟子に指導され行をした。あれが書いた本は神が書かせた」と言われた(天声188号。なお4番目の弟子が日蓮で、19番目の弟子が神武天皇。)この本とは泰山教学講授録(昭和7年)だろう。読んでみると実に面白く、神教が説かれる12年以前の本ながら、大部分は神教解説書といってもおかしくない程だ。彼は河口慧海が日本に帰国した大正5年、宇宙大霊尊の啓示を受け大霊能者になったようだ。
ポイントは虚偽生活をやめ至誠生活をせよ。神心にそう生活をせよということに尽きるようで、具体的内容を広範囲に詳しく書いている。虚偽とは罪悪であり、偽り・臆病・怠惰・残忍・暴慢・へつらい・憎悪・奢侈・貪欲・猜疑・嫉妬・無責任を言い、これらの悪行が恐怖・驚愕・忿怒・不平・煩悶・悲哀という悪魔を生む。この悪魔が円満な平和な心を破壊する。
至誠とは神心であり誠実・勇気・勤勉・克己・大胆・注意深い・忍耐・慈愛・同情・倹約・謙遜・責任・感謝である。
例えば夫婦間の関係は特に重要だ。人間は一夫一婦であるべきで、独身主義の出家は自然に反する。夫婦は1つにならないといけない。夫は妻だけを全力で愛するようになれば、妻も一心に尽くすようになる。又、親子の関係も円満でなければいけない。一例として、子供は因縁があって親子になっているのだから、実子と継子を区別してはいけない、地主と小作人、主人と使用人、商人と顧客などすべての関係を円満にしないといけない。共に相手を思いやり感謝しあい尽くし合わなければいけない。仕事に研鑽し損得を離れてうちこめば、結局自分が儲かり得をする、湯船で水を自分の方に掻き込めば水は逃げる。水を押し出せば、自分に流れ込む。他人に尽くせば結局は自分に帰ってくる。
倹約とは世間のお金を倹約するという意味ではなく、物を自分に必要なだけを費消し、値段の高低にかかわらず無駄に捨てないようにする。ただの水も無駄にしない。
人だけでなく、物にも虫・魚・獣などにも霊がある、至誠の生活をしていると、神心にかない、霊力が出るようになる。霊能で人の病気は何でも治せるが、牛馬や鶏、鯉などの病気も治せる。植物の病気も治せる。それらの実際になおした実例も多数でている。門人が全国の体験談を集めて出版した本(泰山教霊力霊顕録)もある。物にも霊力を伝えられ、それが電気でないことを納得させるため、絶縁体である陶器製の火鉢に離れた所から霊力を送り、火鉢に触る数人の人をピリピリさせて、病気も治してしまうという例も出ている。(大神様も自宅が出火した時、牛小屋の蚊追いに使った火を疑うと、火鉢の霊が自分でないと言ってきたというご説法もある。)
病人を見ると患部は黒く見える。例えば肺が黒いのが見えると肺病患者とわかり、霊能で治せる。習熟すると遠隔地の人間でも治せるだけでなく、感応によりどこが悪いかまで見えるようになる。複数の悪い所のある患者を霊能で治そうとすると、今まで固まっていた病根が溶け出し、一時的に酷い症状になることがある。ある程度長期に施術すると、病原因は糞尿に交じって排泄されたり、皮膚から出たりして治る。貧病で苦しんでいる人を助けたくてやっている。霊力を送ると相手が敏感だと霊動が出たり、ピョンピョン飛んだりすることもある。
病気で入院するのは監獄に入るのと同じ。犯罪をすれば捕らえられ監獄に入れられる。不味い物を食べ、行動の自由を奪われ、労働をさせられる。入院しても、不味いものを食べ、自由が利かず、苦しい思いをする。全く同じ。入院も霊的には過去の罪悪を償うためのものだ。
神は因果律に従い厳密に処理し、好悪・依怙贔屓などはない、心に思ったことまで霊界に総て記録されている。例えば大人に催眠術をかけ、お前は5歳の子供だ、何月何日に何を考えていたか、と問うと、ちゃんと答える、覚醒させると何も覚えていない。
ダーウィンの進化論のように人間が動物・猿などから進化してできたのではなく、始めから人間であった。大神様も同じことを言われており、スウェーデンボルグもそうである。
現今(昭和7年)の日本は家庭生活、職業生活、官吏・政治家・教育者など大部分の生活が私欲暗黒の利己であり、国民の多くが霊性を麻痺させ、道義は廃れ暗黒時代を現出している。このままでは日本が亡んでしまう危機的状況である。各人が至誠生活に精進して光明を放ち国を救へ。(国の3要素は防衛兵備・食料確保・道義でいずれが欠けても滅亡する)
などなど凄い話が満載である。さらにこの本により、天照皇大神宮教の「お祈りの詞(文言)」の大切さを改めて認識し、文言に今まで考えたこともなかった意味があることに気づいた。道場にも支部道場にも天照皇大神宮教の外部での行事(公開説法や葬儀)の場にもこのお祈りの詞は常に掲げられている。天声は35号(紀元11年11月号)以降は本文の一番先頭(表紙の裏)にお祈りの詞は常に印刷されている。それだけ核心的密教的重要性があるということなのだろう。
 お祈りの詞
 天照皇大神宮 八百万の神 天下太平 天下太平 国民揃うて天地の御気に召します上は 必ず住みよき神国を与え給え 六魂清浄 六魂清浄 我が身は六魂清浄なり 六魂清浄なるが故に この祈りのかなわざることなし
 名妙法連結経 名妙法連結経 名妙法連結経

 この総文字数は108文字である。この辺にも密教的意味がありそうな雰囲気がする。